発展途上の王国
「わたし気が利かなかったね。アイスは買ってきたんだけど、アイスノンとか冷えピタとか買って来たらよかった」
「冷えピタなら冷蔵庫に入ってるからだいじょーぶ。アイスはなにアイス?」
「奮発してハーゲンダッツにしようかと思ったんだけど、バニラカップにしておいたよ」
彼は質より量がいいらしい。
学生時代はほとんど話さなかったから、
それを知ったのは夏代くんがこっちに引っ越してきてからだ。
学生時代“孤高の天才”と呼ばれていた夏代くんは、
毎日教室に見学者が来るほどだった。
夏代くんは洗練された顔立ちをしているから、
絵より顔に興味を持っている人も少なくなくて、
それらの光景にわたしはうんざり。
「絵目的で来い」と心の中で悪態をつく日々で、
でも口に出す勇気はなくて、
極力関わらないようにしていた。