6 on 1 lovers -来たれ生徒会-

彼は尚も笑顔を崩さない。

「話を戻すけどさ、俺、キミにはうちの生徒会へ来て欲しいと思っているんだ。丁度書記の席がこの前空いたばかりで…あ、勘違いしないでよ?別に俺が無理矢理追い出した訳じゃないからね。ちょっと『キミ使えないね』って言ったら勝手に辞めたんだ」

それ完全に貴方のせいですよね。心の中でそう思うも、相手は先輩で生徒会長。当たり前だが言えるはずもない。

「だからね、俺から1位を奪ったキミに是非、この書記の席を埋めてもらいたい!どうだろう」

彼はここまで一度も笑顔を崩すことなく私を見つめる。しかし私には終始、彼の笑顔は笑っているように見えなかった。笑顔の裏で黒い渦を巻いているような、ドロドロとした何かが隠れているように思えた。

「…えっと……、お誘いは大変有難いんですけど……、私、勉強を疎かにしたくなくて…だから…」
「俺の率いる生徒会に入るくらいなら、勉強したい。そう言いたいの?」
「……いえ、そういうことではなくて…あの…」
「だったらいいよね。この俺が誘って、断る理由なんて何一つないし。…それに、」

少し言葉を濁した彼は、少し崩れた笑顔を私に向け、

「…キミには、少しだけ期待しているんだ」

初めて見た彼の『完璧』以外の笑顔に、私は思わず首を縦に振ってしまった。

「……書記…くらい、なら」
「ほんと!?ありがとう!この事は早速うちの生徒会のみんなに伝えるよ。良ければ今日から来てもらえるかな?3階一番奥の生徒会室」

彼の『完璧』な笑顔が崩れたのは一瞬で、次の瞬間にはすぐに見覚えのある爽やかな笑顔に戻ってしまった。少し残念だと思うのも束の間、一度承諾してしまった話は戻ってはくれない。

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