神様修行はじめます! 其の三
絹糸の声が会話を遮った。


いつの間にかあたしと塔子さんの間に座り込み、金色の両目で彼女を見上げている。


塔子さんの鼻からふんっと息が漏れた。


「・・・絹糸か」

「この小娘は、前回の戦いの功労者じゃ。永久の命の恩人じゃぞ?」


塔子さんは扇で顔を隠したまま、冷たい目で絹糸を見下ろしている。


そしてホホ、と小さく笑った。


「前回の戦い? あら、いつそんな戦いがあったかしら? 私は聞いた記憶がないのだけれど?」


扇から覗く一重の目がニンマリ笑い、絹糸がそのまま黙り込む。


そうなんだ。あの戦いは・・・


公式では、無かった事とされているから。


神の一族は戦いの一族。


だから当然、武勲をたてた者はお株がぐ~んと上がる。


あたしは前回の戦いで門川君を守った。


普通でいったら英雄扱いされてるところなんだけど。


後継者争いでトップが殺し合ったなんて、大変なスキャンダル。


これを明らかにしてしまったら、門川の屋台骨そのものが揺らいでしまうだろう。


ひいては門川君自身の立場までも危うくなる。


だから、戦いなんて何も無かった。だから、あたしの武勲も何も無い。


表向きはそういう事になっている。

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