神様修行はじめます! 其の三
彼の涼しい顔をこっそり見上げた。


いつも通りの、本当に何事もなさげな冷静沈着な顔。


一見、冷たくさえ見えるその表情の下はとても温かい。


氷の壁の向こうの、お花・・・。


変わらない。

彼の心の奥の隠れた優しさは全然変わっていない。


「お前たち、無礼じゃぞ。当主が何でもないと言っておるのじゃから大概にせい」


絹糸が助け舟を出した。


術師たちは顔を見合わせ、恐縮したように言い訳をする。


「も、申し訳ございません。しかしながら・・・」


「我々とて当主様がどちらにおられたのかを、上の方に報告せねばならず・・・」


「ああ、厠じゃ。厠におったんじゃよ」


かわや??

・・・あぁ、トイレの事ね?


すると術者のひとりが、真面目な顔で返答した。


「厠でしたら、わたくしがちゃんと中まで確認いたしましたが?」


・・・・・・はあぁ!?

まさかあんた、開けたのっ!?


門川君が入ってるかもしれないトイレの扉、ガバッとぉ!?


いやちょっと、さすがにそれは人権無視じゃない!?


当主って戦闘中は、例の真っ最中の時も監視されなきゃなんないの!?


・・・・・出ないわよそれじゃ!

出ないと言うか、出せないと言うか!


「あ、い、いえ、お声をお掛けしましたが返答が無かったので、扉を・・・」


思わず凝視してしまったあたしの表情に、決まり悪そうに術者が言い訳した。


「返事なら、したよ」


門川君が前を向いて歩きながら、後ろの術者にそう言う。


「・・・は?」

「返事はした」

「いや、お返事は・・・というか、おられなかった・・・・」

「したよ」


歩みを止めず、冷静な視線がチラリと後ろに流れる。


「僕は返事もしたし、いたんだよ。・・・分かったな?」

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