神様修行はじめます! 其の三
「永久様ってスゴ過ぎる! ぼく一生ついていきます!」


「当主様! 我ら感服いたしました!」


「お見事でございますわ!」


どうも斜めに見ちゃうあたしとは違って、三者三様、それぞれ小躍りせんばかりの称賛。


当の門川君はひと言「ありがとう」とだけ言って流す。


・・・・・・。


本当に、なんの感慨も無いんだろうな~、この人。


自分が、いろんな意味でスッゴイ事したとは微塵も思ってないと思う。


だから多分、みんなからの称賛にも「ありがとう」の言葉にも、たいした感情は持って無いはず。


あたしはこっそり溜め息をついた。


自慢して天狗になるよりマシと言えばマシなんだけど。


それにしたって、この感情の機微の無さはやっぱり問題よねぇ。


いや、別に照れくさがってモジモジしろとまでは言わないけどさぁ。


彼にそんな可愛い事されたら、どっか具合でも悪いんじゃないかと逆に心配になるし。


・・・ま、お礼を返すようになっただけ進歩かな?


「阿・吽よ、どうじゃ?」


絹糸がムク犬ブラザーズに話しかけた。


ブラザーズは揃って絹糸に平伏し、声も揃って返答する。


見た目は元気そう。ムクムク具合も健在だし。


「「多大なご迷惑を・・・深くお詫び申し上げまする」」

「結界、張り直せるかの?」

「「ご心配には及びませぬ」」


絹糸は頷き、門川君に向き直る。


「永久、ではここは任せてぼちぼち行くとするか?」

「ああ」


無表情で同意する門川君に、あたしは首をかしげた。


行く? どこへ行くの?


「端境(はざかい)一族の屋敷に行くんだよ」

「あの屋敷に戻るの? なんで?」

「雛型があそこにいるからだ」


・・・・・えっ!? 雛型!?


雛型があそこにいるのっ!?

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