神様修行はじめます! 其の三
でもなんで!? 雛型と麻呂当主はあの時一緒に姿を消したじゃん!


「でもあそこにいるんだよ」

「だから、なんで!?」

「絹糸がいくら探しても見つからないから、だよ」

「・・・・・へ?」


あたしはさらに首の角度を傾げた。


門川君って、いつも重要な課程部分をぜ~んぶ省いて説明するんだもんっ。


だからそーゆーのはね、説明とは言わないの。


世間じゃそれを『自分の世界』って言うの。


なおかつ『自分の世界』が他人にも当然通用すると思ってるんだから。


この問題点も相変わらずっ。


「我にはそれぞれが持つ気配が読める。じゃから小娘も探し出せた」


「あぁ、うん」


「雛型ほどの特殊な気配なら、たちどころに探せるはず。じゃが・・・」


「見つからない、の?」


「うむ。となれば考えられる事はひとつじゃ」


「絹糸でも探せぬほどの強力な結界の中に潜んでいる、ということだよ」


結界。それは端境の専売特許だ。


強力な結界の場所ならこの世界に何箇所かあるけれど。


この非常時に彼等が一番安心できる場所と言えば・・・。


「自分達の敷地内、ですね!?」


「いずこかへ去ったと見せかけて、実は移動せず。よくある手でございますな」


「灯台下暗し、ね。姑息な手を使うものだわね」


凍雨君達が納得した。


そうか、じゃあやっぱり雛型はあの屋敷のどこかにいるんだね。


あたしの脳裏に雛型の様々な表情が浮かぶ。


あの時・・・償いが終わったと思った時の、あの嬉しそうな笑顔。


絹糸に話しかけた時の優しい眼差し。


全てを知った時の激しい感情。


吹雪に身を凍らせて・・・千年、流し続ける涙。

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