神様修行はじめます! 其の三
そりゃ門川君は言霊師なんだから、剣術が不得意なのは知ってるけどさ!

得意不得意以前の問題だよ!

彼の場合、ただ単純に周りに気を使ってないだけってのが丸分かり!


「永久! 小娘!」

絹糸の鋭い声が聞こえて、振り向いたあたしの目が見開かれた。

しまった! 背後から魔犬が襲い掛かってきた! もう目の前!


「馬鹿者! 油断するでないわ!」

絹糸が跳躍し、爪の先で魔犬の両目を切りつける。


一瞬怯んだ魔犬の隙を見逃さず、門川君が片足を踏み込みながら剣を振り下ろした。


頭上高く掲げられた剣の白い切っ先が、美しい弧を描く。


そして、一刀両断。
あの粘った血液すら出ないほど、薄く鋭い切り口から霜が覆って、魔犬はドサリと地に斃れた。


・・・・・・


剣術の腕前、向上してんじゃん! ちゃんと!


「やっぱあたしに気を使ってなかっただけか!」


「味方に気を使われるより先に、自分で避けたまえ。戦場はどこまでも過酷だ。甘えは死に直結するだけだ」


彼はこっちを見もせずサラリと言い切る。


感情の一切読めない、冷たいほどの冷静沈着さは、幼い頃から命の遣り取りに勝ち続け、生き残り続けた男の顔だ。


はいはいはい分かってます!

でもね! 人間、正論過ぎる正論をブチかまされるとねぇ・・・!


「逆ギレしちゃうもんなんだよ!」


―― ゴオゥッ!!

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