神様修行はじめます! 其の三
「マ、ロ・・・?」

マロは・・・

ポカンとしていた。

何がなにやら、自分でも良く分からない。そんな顔で。


でもしっかりと、その両手は印を組んで、そしてそれは間違いなく塔子さんに向けられていた。

マロの膝の上には、黒く焦げた煤のようなものが転がっている。


・・・あれ、蜘蛛だ。

マロの耳元に張り付いて、言霊の術をかけて操っていた蜘蛛。

ウルトラ強欲因業ババの、あの蜘蛛だ。


「マロ・・・」

「・・・・・・」

「蜘蛛の糸、破ったの・・・?」

「・・・・・・」


マロが・・・

術を破った。自分の力で。

いや、違う。術を破ったのは・・・

塔子さんの言葉を聞き、塔子さんの心に触れ、塔子さんの行動を目の当たりにした、マロの真の心。

他人には犯すことの出来ない、絶対的な領域である真実の心。

その心が、自分の意思で、塔子さんを救うことを望んだんだ。

マロの中の真実が、塔子さんの真実を認めたんだ。

ふたりの真実の心が、蜘蛛の糸に勝ったんだ。


あたしは、すうぅぅーっと大きく息を吸い込んだ。

鼻からも口からも、もう、胸いっぱい限界のギリギリまで息を吸う。

そして・・・


「マぁぁロぉぉ―――――!!!」


肺活量の全てを駆使してマロの名を叫び、マロに力の限り抱きついた!

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