神様修行はじめます! 其の三
ひょいっと薄茶色の頭が上がった。


まだ子どもらしさの色濃く残る顔立ちが、好奇心を押さえ切れないように門川君を見上げる。


「凍雨(とうう)君?」

「はい。凍雨と申します」

「良い名だね。とても」


ニコリ。

幼い顔が嬉しさを隠し切れずに微笑んだ。


それを見た門川君も穏やかに微笑む。


――シュウウゥ・・・


この空間全体を覆っていた冷気と霜が一気に引いていった。


床も柱もまったく元通り。


まるで嘘のように湿り気ひとつ残さずに回復する。


「凍雨君、立ってくれたまえ」

「・・・・・・」

「いいから気にせず、立ってくれ」


軽やかに立ち上がる少年と門川君が向き合って立つ。


頭ひとつ分ほど低い相手に、門川君が熱心に話しかけた。


「会えて嬉しく思う。よく来てくれたね」

「こちらこそお会いできて光栄です」


元気に返す声は、どこまでも素直そうで明るい。


「当主様がお出掛けになると聞いて、お見送りをしなければと参りました」


「そうか。それはありがとう」


「あの、当主様、ごめんなさ・・・いえ、申し訳ございません」


「? なんの謝罪かな?」


「今回の外出は『就任の儀』の不手際を解決するためですよね?」


小首を傾げて凍雨君が聞いた。

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