ケチャップのないオムライス【短編】
「美華、あーんして」
私がバニラアイスを食べていると、可愛らしい顔を向けてトシユキが言ってきた。
「嫌よ」
きつく断る。
調子に乗られたらあとで困るから。
だけど本気で落ち込む姿を見てると、ちょっとだけ可哀相になる。
「一口だけね」
小さくアイスを掬ってトシユキの口元に持っていく。
途端に顔が明るくなって、パクッと私のスプーンを口に含んだ。
もう色んな男と会ってきたせいか、間接キスにときめくことはなくなってしまった…
そんな私とは違って、トシユキはこの状況を喜んでいるらしい。