Loneliness



「君が どう言う境遇で
スパイに なったのか
俺は知らないけど……
流されて生きていて、
苦しくない?」



それは、生まれて初めて言われた
言葉だった。



同情も好奇心も、要らなかった。
煩わしかった。



大丈夫? と言う言葉も、
大嫌いだった。



苦しくないかと問う瞬の言葉は、
唯々 現実を真っ直ぐに
捉えているものだった。



だからこそ、言えた。



「……苦しいに、決まってるだろ。」



感情を棄てた俺にとって、
苦しみや寂しさは、
感じては いけないものだった。



けれど、言えて解った。



やっぱり、
感情なんか棄てられない。



俺は ずっと、
苦しかったんだ。



「そう。」



俺の言葉に瞬は微笑んだ。

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