Loneliness
腹癒せ



人としての楽しみ。



そんなもの、
とうに捨てた……筈だった。



男しか居ない
育成所や管理所で過ごし、
決められた女としか結婚 出来ない
スパイにとって、
町の娼婦館に通って
一夜だけの享楽に身を委ねる事は
必要悪なのだと、
昔 聞いた事が在る。



一夜だけの享楽。



そんなものを手に入れて、
どうなると言うのだろう。



夜だけ全てを忘れて女と交じり、
朝には徹底的に管理された
現実へと戻る。



そんな事を して、何に なる?



虚しくなるだけじゃないのか。



そう考え、
周りの誘いを断って来た。



俺が子供だっただけなのか?



それとも。



俺は、逃げていたのか……?

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