私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
「あの人、私に何をしようとしたのかしら……」


私は呟くように言った。答えは解っているけど、もしかすると別の答えがあるんじゃないかという、一縷の望みを託して。


「アキラはこう言ったよね? “今度の彼女はもっと酷い目に遭うかもしれませんよ”と。そしてそいつは、わざわざ宅配便になりすましてやって来た。という事は……」


私はゴクッと唾を飲み、剛史の続く言葉を待った。


「もし君の反応が遅れ、そいつの侵入を許していたら、今頃君は、そいつに……」


「やめて!」


私は、玉田さんの顔をしたあの人に組み敷かれた自分を想像し、おぞましさと恐怖で思わず叫んでいた。


「ごめんよ。脅かしてしまって……。しかしそう思った方がいい。油断は禁物だから。たとえあいつの顔が、君の好みでもね」

「そんな意地悪言わないで。確かに最初はそう思ったけど、今は全然よ。あの顔を思い出すと、怖くて震えちゃう」

「そうか」

「どうしよう……。私、怖くて外に出られない。朝になっても、会社に行けない……」


私は途方に暮れ、涙がひとりでに溢れてきた。


「大丈夫だよ。俺が君を護るから」

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