羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》



「おかえりなさい、酒童さん」


 情熱的なお出迎えをした茨と違い、榊は落ち着いている。

そんな榊の隣には、例によって桃山がついていた。

ここ最近の榊と桃山は、普段よりいっそう仲睦まじくなっており、もう2人で1組である。


「みんな首を長くして待ってたんですよ」


 桃山が言う。


「やっぱり僕ら、酒童さんがいないと、仕事してる気になれないんです」


 桃山の肯定的な言葉に、酒童とは違う班であるはずの茨が何度も頭を縦に振る。


「お前ら……」


 酒童はあまりの手厚い歓迎に、むしろ狼狽していた。


「……いいのか?
俺は、前の俺じゃないんだぞ。
あの姿、見た奴だっているだろ」


 恐る恐ると詰め寄るように問う。

 しかし、榊や桃山、羅刹一同の表情は変わらない。
 
曇るどころか、むしろ活気に溢れんばかりの貌であった。



「そいつぁ……悪いことじゃないっすよ」


 ふと、酒童の背後にある廊下から聞き慣れた声がやってくる。

 他でもない、朱尾の声であった。


「朱尾」


 酒童が振り返った先には、見違えるように小綺麗になった朱尾が歩み寄ってきていた。

 いつものジーンズにタンクトップという薄手ではなく、ちゃんと羅刹の装束を身に纏い、その眼は、まるで憑き物が取れたかのように生気がある。



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