チョコよりも甘く
「それで…」
切り出したのは翔のお母さん。

皆はお母さんに注目し、次の言葉を待った。


「翔の不注意で、こんなことになってしまって…本当にごめんなさいね……。もう、、何て言ったらいいのか、、」


あたしは正直、そんなことは気にしていなかった。


あたしは、翔とあたしの間に出来た赤ちゃんの存在を認めてもらっただけで、嬉しかった。


「いえ…、それはあたしの不注意でもありますので…」

あたしは遠慮がちにそういった。



そこで、今まで黙っていたお父さんが口を開いた。

お父さんを見るのは今日で二度目。

二度目と言っても、紹介されたときにほんの挨拶程度を交わしただけだった。


「わたしからも謝らせてくれ。……申し訳ない。でも、おきてしまった事はしょうがない。受け止めるしかない。」


お父さんは最もな意見を述べた。


あたしは無意識にも頷いていた。


「それでだな、あ―…、、、、率直に聞くが…、どうするんだ?」


きっと、おろすか産むかの話だろう……。



あたしはおろすつもりでいた。


こんなガキが親になって、一つのイノチを養おうなんて、無理な話だと思っていた。

つい30分前に決意した時、あたしは『産まない』と。そう決めていた。



しかしその直後、翔からの電話であたしの決意はどこかへ崩れ去った。


「産む………あたし…………産みます!!」



そう言った瞬間、あたしの目からは一雫の涙がこぼれた。
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