嘘の誓いとLOVE RING
見えない敦貴の本心


敦貴と二人きりになる場所へ行くには、少なからず抵抗があったけれど、圭祐の言っていた“水川社長”が敦貴である以上、話を聞いてみようと思ったのだった。

言われた通り、フロア奥の非常口へ行くと、ヒンヤリとした空気が漂う中階段へ出た。

ここなら、人が通る心配はなさそうだ。

深呼吸をして、しばらく待っていると、本当に敦貴がやって来て、私を懐かしそうな目で見た。

「美亜は、二年前より綺麗になったな。だけど、まさか浅井社長夫人として再会する事になるなんて、思ってもみなかったよ」

「私は、敦貴が社長になってるなんて、思ってもみなかった」

たった二年で、敦貴は何をしたのだろうか。

すると、心の中を見透かした様に、敦貴は答えたのだった。

「美亜と別れた後、会社を辞めたんだ。そして、人脈を活かして会社を興した。そういう訳なんだよ」

「何の会社?」

「ネット配信の会社だよ。ニュースだったり、ゲームだったり、SNSの作成だったり」

さすが敦貴。

IT業界でやり手だっただけはある。

だけどまさか、会社を興すなんて予想もしていなかった。

驚きで言葉を失った私を、敦貴は小さく笑ったのだった。

「あの時言ったろ?仕事に集中したいから別れたいって。ただ、今となっては後悔しかないんだけどな」

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