嘘の誓いとLOVE RING


「浅井社長!お久しぶりです」

部屋のドアの前で待っていた凌祐を見つけるなり、敦貴はそう声をかけた。

口ぶりから、二人は初対面でない事が分かる。

すると、私たちを見た凌祐は、少し驚いた様子を見せながらも笑顔を浮かべたのだった。

「お久しぶりです。水川社長。まさか、私の妻と一緒だとは…」

「さきほど、偶然お顔を拝見したもので、ご挨拶をしていたんですよ」

何が、“ご挨拶”だ。

とても凌祐に合わせる顔がない。

だけど、ここで不審に思われる行動を取るわけにもいかず、敦貴に丁寧に頭を下げた。

「これから、よろしくお願いします。まだ不慣れな部分もあるので、今日は失礼します」

いきなりの“帰る”宣言に、凌祐は驚いているけれど、私はその背を押してその場を離れようとした。

すると、敦貴から声をかけられたのだった。

「美亜さん、今度LOVE RINGを持ってきてください。実は、私の昔の恋人との思い出なんです。皆さんのLOVE RINGを見せて頂きたくて」

それに返事をする余裕はなく、逃げる様にその場を離れたのだった。

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