嘘の誓いとLOVE RING


凌祐と一緒に向かった先は敦貴のオフィスで、オフィス街にあるビルの中にあった。

エレベーターに乗り込みオフィスへ向かう途中、凌祐が心配そうに聞いてきたのだった。

「本当にいいのか?美亜。気まずくないか?」

「いいの。裏切ってたのは、敦貴の方だったんだから」

思い出にある敦貴は、不器用でも優しさのある人だったはずだ。

それがこんなに変わってしまったのは、正直言ってショックではある。

だけど、だからといって、敦貴を許す気にはまるでなれなかった。

「会社を興してから、染まったんだろうな。“欲”ってやつに」

凌祐の言葉に、私は小さく頷いた。

そしてエレベーターの扉が開くと、凌祐とゆっくり向かったのだった。

フロアには、2社が入っていて、奥が敦貴の会社のオフィスらしい。

シンプルな磨りガラスの扉が開いていて、正面には呼び出し用の電話が置いてある。

凌祐はそれを手に取った。

「浅井凌祐です。水川社長に会いに来ました」

緊張が一気に高まる中、敦貴は余裕の笑みを浮かべて出迎えたのだった。

「まさか、ご夫婦でお越しとは。どうぞ、こちらへ」

もはや敦貴には、軽蔑の思いしか抱けない。

厳しい顔のまま、案内された応接室へと向かったのだった。

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