嘘の誓いとLOVE RING
小さく手を振ってみたけれど、凌祐は玄関のドアを開けない。
「どうしたの?時間、無くなっちゃうんじゃない?」
すると、凌祐は軽く唇にキスをした。
その予測外の行動に、少し戸惑う。
「笑ってくれないと、気になるんだけどな」
「凌祐…」
言葉が続かない私に、凌祐は優しく微笑んでいる。
「仕事も手につかなくなりそうだから、笑って見送って」
そんな甘い言葉を、本心で言っているのか分からない。
だけど、私の胸は締め付けられるようにときめいた。
「うん。行ってらっしゃい」
ぎこちなく微笑むと、今度はおでこにキスをされた。
そして凌祐は笑顔で、「行ってきます」と言うと、玄関を出て行ったのだった。
一人部屋に残されると、何だか寂しくなる。
凌祐との結婚なんて、納得出来ていないのに。
だいたい、幼なじみとはいえ、全然仲が良くない人だったのに。
それなのに、寂しく感じるなんて、調子が狂ってくる。
深いため息を一つしてキッチンへ向かうと、食洗機から食器を取り出し洗い始めた。
今日は、仕事に有休を貰っている。
それならば、家事はきちんとしなくては。
というより、凌祐へ意地悪をした、せめてもの罪滅ぼしだった。