嘘の誓いとLOVE RING


社長室は、エレベーターから見ると一番奥にある。

そのドアをノックすると、優しい女性の声で、「はい」と聞こえドアが開かれた。

「あら?」

出てきたその人こそ、佐倉さんに違いない。

スレンダーな美人。

私よりは背が高く、160センチ以上はありそうだ。

目鼻立ちはスッと涼しげな和風美人で、柔らかな印象だった。

「美亜さん。どうされたんですか?」

私の事は知っている様で、驚きつつも落ち着いた優しい口調で問いかけてきた。

すると、佐倉さんの後ろから、「美亜!?」と凌祐の声がしたのだった。

その声に気付いた佐倉さんは、「どうぞ中へ」と招き入れてくれた。

社長室も、秘書室が先にある造りになっている。

そこに凌祐がいたって事は、二人で何かを話していたという事なのだろう。

仕事なのだから、それは当然と分かっているけれど、どこか嫌な気分だ。

「お邪魔します…」

怖ず怖ずと入ってきた私に、凌祐は驚いた様子で駆け寄って来た。

「どうしたんだ美亜?何か、困った事でもあったのか?」

< 37 / 220 >

この作品をシェア

pagetop