なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

「ひさしぶり~! 元気だった?」

 甦るあの日の記憶は見なかったことにして蓋をした。

「あの日以来だよね」

 やんわり、はじいたのにぃ。ずかずか来るんですね。

 『そうだね』と流し、あまりその話題には触れないようにした。私もいい思いはしないし彼もまた同じだろうと思ったから。

「連絡しなくてごめんね。ほら、彼氏と一緒にいるって言ってたからさ」

「あぁ、そうだよね。私の方こそ庇ってくれたのにちゃんとお礼も言えなくてごめん。もっと早く連絡しようと思ってたんだけど」

「いいっていいって。そんなことは。それより、順調?」

「え? あ? うん。萩原さんとのこと? だよね。うん、なんとか」

「そっか。なんか残念」


 え?


「変な意味じゃなくて、俺、夏菜ちゃんのこと好きだし」


 何その突撃的な告白!


 なんの心の準備もできてないんだから、剥き出しの心臓に一発ドッカンと矢が刺さったっつーの!


「えっと、それはその」

 こういうときなんて言えばいい?

「また食事にでも行こうよ」

 にかっと笑って日焼けした顔から真っ白い歯を輝かせ、私の返事を聞く前に『じゃ。こんどまた連絡するね』と言って、走り去ってった。

 そんな冬山君の後ろ姿を見つめながら、何であのときあの場所にいたの? どうしてあそこにいたの? ということを聞くのを忘れたのに、気付いた。

 私はいつも肝心なことを聞くのを忘れてしまう。



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