なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

いつまでもここにいるわけにはいかない。

 野々宮さんから与えられた部屋にまだいるこの屈辱ったらない。でも仕方がなかった。忙しくて家を借りることすらでいないでいた。

 でもやっと一段落ついたので、ここでひとつ区切りをつける。そして仕事も辞めよう。

 幸いにして、真のおかげで仕事をたくさんしていたので少しの蓄えはできた。先日の敷金払え催促もこの前の話し合いでチャラになり、しかも荷物代3万円も返すと差し出されたが、まあそれは受け取らなかったんだけど。

 なので、新しい家を借りるお金はある。そしてそれは残して置いてどこかへ旅立とう。

 荷物は全部萩原さんのところに置きっぱなしだから何もない。

 もちろんのこと、取りに行くことはできないし、あれから連絡は一切ない。メールのひとつもなく、電話は静かなものとなった。

 スタジオは今まで通り順調に業績を伸ばし、メディア露出も頻繁になった。

 2週間が経とうとしているが、私の胸にぽっかり開いた巨大な穴はどんどん大きくなっていて、埋まることはないだろう。

 気づけば溜め息ばかりついていて、仕事をしているからまだ精神的に保ってられるわけで。

 一緒に行った場所は全部片っ端から避けている。万が一があるから、その万が一に遭遇しないためにはそうするしかない。

 自分で考えたことの結末とはいえ、切なすぎる。

 三方一両得ってことは私には無い言葉なのか。

 とか、どうでもいいことばかり考える。一日中ぼーっとしてるし気力無し。体力無し。

 私のヤル気スイッチは永遠に葬られたと思う。

 こんなにまでも大きな存在になってたなんて。

 失って初めて気づく、大切な存在。

 一度ぷつりと切れた絆がもとに戻ることはなくて、例え戻ったとしても、昔と同じようにはならない。

 一番大切なものは、失わないと分からないなんて、神様がいるとしたら本当に性格が悪いんだ。


< 229 / 261 >

この作品をシェア

pagetop