なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

 『いつも笑顔でいること』

 ミッションクリアってこと?

 確かに笑顔でいることはもちろん、身なりもちゃんと気を付けていたし、出来る限りそうしてきたつもり。でもまだ完璧とは言えない。

「クリアするごとにご褒美をやろう」

「ご褒美って今の...」

「次はもっと先もあるけど」

「いいです、いいです。辞退します」

「できないだろ」

 完全に萩原さんのペースだ。


「設定した期限も過ぎたし、丁度いいんじゃないか」

 あぁ、そう言えば期日を設けられてたっけ。

「次に進もうか」

「...はい。そうしてください。なんかよく分からないけどその方がいいような気がします」



 自分で言った復讐計画ミッションその2を、張本人が酔っぱらって忘れたために、第三者により教えられるこのどうしようもなさ。


 その言葉に、先ほどまで疼いていた身体はおさまりつつある。そしてそれは理性が勝ったとでも言っておこうか。



「その2はな」
 
「その2は...」

 ゴクリと唾を飲む。なんなの。なんなの。なんなの!




「自分の仕事に誇りを持つことだ。仕事を好きになるってことだな」

「はい?」

「だそうだ。お前が言ったことだから俺に聞かれてもそれは分からない」

「もう誇り持ってますし」

「じゃぁ、簡単じゃないのか」

「たぶん簡単だと思いますね、それは」


 私は何を言ったんだ? 自分の仕事に誇りを持つことなんて当たり前のこと。

 ミッション2のおかげで私は何をしたいと思ったんだか余計分からなくなる。


 でも、こうなったら徹底的にやってやる。いや、むしろやるしかない。


 過去の私は何を考えたの? んでもって、目の前にいる萩原さんに何を言ったんだ。

 萩原さんは一体誰なの? スタジオの鍵を持ってて関係者だって言ってたけど、萩原さんなんて見たことないし。


 社長じゃないのは確か。

 だって、店長に聞いた名前と違う。

 社長の名前は、前川彰(まえかわあきら)だった。

 そこに萩原さんの名前はなかった。
 

 ミッション2は、萩原さんの秘密も含めて明らかにすることだ。

 まずは私が言ったことの真意、それから萩原さんのことを調べる。



 よし、これだ。

 一人で頷き、手をグーにした私を萩原さんは肩を揺らしながら笑いをこらえていた。


 ことになんて、気づく余裕、まったく無し。

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