②灰川心霊相談所~『闇行四肢』~
「まぁ、僕が興味深いと言ったのは今朝のニュースと関係していましてね」
「ニュース、ですか?」
「ほら、ちょうどこれから午後のが始まります」
灰川さんは、どこかから拾ってきたらしいブラウン管の箱型テレビの電源を入れると、ワイドショーにチャンネルを合わせた。
「今朝未明――豊島区在住の、三船慎吾さん24歳が遺体となって発見されました。三船さんの遺体は酷く損傷しており、現在警察では司法解剖による死因の究明が急がれています。
――尚、この事件には特異な点がいくつかあり――」
……私はテレビに映しだされた被害者の顔を見て息を飲む。
細長い輪郭に白い顔。まさに、昨日のあの男だった。
これは、一体どういうことなのだろう……。
「――この事件は凶悪犯による猟奇殺人事件として捜査が進められています。……第一発見者の隣人の証言によると、三船さんの悲鳴を聞き、駆けつけ中に入ると三船さんは大きな洋服箪笥の中で無残な姿となり息絶えていたというのです。その残忍な犯行手口は、とてもリポーターの私からは細かく話せないのですが――」
『箪笥』……。
なるほど、確かに繋がった。
「……灰川さん、察しの通りこの三船って人が件の男性です」
「やはりそうですか。まぁ、これが人による殺人であるならばそれを調べるのは僕達ではなく、警察の仕事です。夕浬さんは『箪笥』というキーワードしか聞いていないわけですし」
「……そうですね」
たしかに、動こうにも具体的な情報が少なすぎてなにもできない。今の段階で、私にできることは何もない。
それに、警察が犯人を捕まえてくれればそれでひとまずの解決をみることはできる。この件に関しては、もう関与する必要はもうないのかもしれない。
――この時は、ただ安易にそう思っていた。