未来へ
[コンコン]
「お手紙です。山霧悠志様でいらっしゃいますか?」郵便局員は、制服の帽子をかぶり直しながら男に聞いた。
「俺だけど。」
「そうですか。失礼しました。ではお手紙です。」
「はぁ」
「私は、これで失礼します。」
郵便局員はそれだけ言うと、頭を下げ出ていった。

───今は21XX年
科学は進み、街には空が見えないほどの高層ビルが立ち並び、その間を車が走り回っている。
そんな街を想像している方は、いるだろう。
だがまるで違う。
街並みは、20XX年以来変わっていないらしい。
人は目まぐるしく変わっていったが街の様子は変わらなかった。
何故か、理由は簡単だ。
政治がそうさせたのだ。
20XX年日本は、ある法律をつくった。
第八一六条
日本科学保護法

内容は、このようなものだ。           
日本の科学進み過ぎた。
世界でも飛び抜けて科学の力がある。これ以上科学が進むと、いつ他国から攻められるか分からない。
したがって日本は、このような法律を定める。

日本は、20XX年以降科学を進めては行けない。
進めるとしても日常生活に必要最低限しか認めない。
      ────── 
悠志は手紙の封を切り
中身を読んだ。

(山霧悠志に命ずる。
 明日23:15に社長室に
 集合するように

 1月9日 城田 寛)

城田寛とは、社長の名前。つまり、この手紙は社長じきじきの緊急命令だ。
悠志の家から会社までは、一日かかる。
そろそろ家をでなければ
間に合わない。

悠志は最小限の荷物を持ちコートを着て飛び出すように家を出た。

会社までは、電車で一時間半かかる。場所は、
東京都心

悠志は、電車に揺られながら手紙のことを思い出していた。

(社長じきじきの手紙か… ついに始まるのかな……)
そこで思考を止めた。
今日は一日ずっと会社にはいるための手続きをしなくては、ならないのだ。
時間はたっぷりある。

電車の窓から外を見ると、瞬きする暇もなく次々と建物が過ぎていく。

駅のホームに止まる。

目の右端では建物を壊していた。しかし左端では高層ビルを建てていた。
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