狡猾な王子様
「とりあえず、明日から朝にウォーキングする!」


「よし!」と気合いを入れて縁側に腰掛けると、秋ちゃんがまた眉を寄せた。


「夜にしろ」


「どうして?朝の方が気持ちいいだろうし」


「朝は苦手だって言ってるだろ」


「え?」


「仕方ないから付き合ってやる」


目を小さく見開くと、秋ちゃんがなぜか不服そうにした。


「ひとりでやるより、やる気出るだろ。だから、夜にしろ。俺が夜勤の時は、春か夏に頼め」


「秋ちゃん……」


「その代わり、絶対途中で音上げるんじゃねぇぞ」


「……うん!ありがとう!」


私が満面に笑みを浮かべると、秋ちゃんの表情がさっきよりも不服そうになった。


「ねぇ、なんか怒ってる?」


「……別に怒ってねぇよ。とにかく夜にしろ。あと、なにがあっても絶対ひとりで行くなよ」


秋ちゃんは私の頭にバスタオルをバサっと掛けて立ち上がり、ムスッとした顔のままさっさと居間から出て行ってしまった。

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