狡猾な王子様
「もう一杯どう?」


「ありがとうございます。でも、そろそろ帰ります」


優しい笑みを浮かべた英二さんに微笑みを返すと、彼は「そう」と小さく頷いた。


「じゃあ、よかったらこれ持って帰って」


笑顔で差し出されたのは、今日淹れてくれた紅茶の葉。


「え?」


「あんな話を聞きながら飲んでたから、ちゃんと味わえなかったでしょ?それに、八つ当たりもしちゃったしね……。開けてある物で悪いけど、家でゆっくり飲んで」


「でも……」


お土産で貰ったと言っていた茶葉程の高級品ではないだろうけど、それでもスーパーで売っているとは思えないおしゃれな缶を前にして躊躇ってしまう。


「葱のお礼もあるし」


「あれは、本当に売り物にならない物で……」


「市場には出せなくても、選別すればうちの店では充分使えるよ。だから、すごくありがたい」


自宅用の葱と、お店で出す茶葉。


物々交換にしてもその価値に差があり過ぎて、再度首を横に振った。


だけど……。

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