溺愛協奏曲
「蓮・・・・言うの忘れたけどここはあたし専用の化粧室なの・・・


入るときはノックくらいしてほしいんだけど・・・」



蓮は紗枝子さんの目の前に来ると睨みつけたままドレッサーの上にあった化粧品の



瓶を床に叩きつけた・・・・・ガラスの割れる音がして中身があっという間に零れ落ちた



透明な液体が床の絨毯に広がると化粧水の香料の匂いがあたり一面に漂い始めた



「ノック位しろだと?生憎俺は常識のない人間なんで礼儀なんてもんは持ち合わせて


いないもんで・・・それに俺はてめえの婚約者らしいじゃねえか?婚約者の元を訪ねる



のにノックもなにもねえと思うんだけど・・・違いますか?紗枝子お嬢様?」



蓮はそう呟くとにやりと冷たい目で紗枝子さんの方を見た



紗枝子さんは何も言わずただ黙って蓮を見つめていた




「何が言いたいの・・・・?」



「何が言いたいかだと?俺も大概常識外れの人間かもしれねえけどてめえの常識の


なさにはあきれ果てるわ・・・・ノックしろだと?はっ?そんなことよりもお前の


忘れっぽいその頭をどうにかしてほしいわ!」



「あ・・・・あたしがなにを忘れてるっていうのよ!」





蓮はドレッサーの椅子を思いっきり蹴り飛ばすと勢いで椅子がドアにぶつかった



ものすごい音がしてあたしは驚きのあまり思わず耳を塞いでしまった



それを見ていた蓮がすかさずあたしの傍に来るとそっと抱きしめてきた



蓮はあたしを抱きしめたまま紗枝子さんに向き直る




あたしは手の痛みも忘れて蓮の背中にそっと腕を回した







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