【特別番外編】苦手な教師



その男は、僕の勤める高校に新任教師としてやってきた。

着任式の前に職員室で顔を合わせたとき、僕はこう声を掛けた。


「久しぶりですね。――真山くん」


中性的な面立ちにすらりとした体型をもつ新任教師……真山恭一は、大学のときの後輩だった。

別段仲良くした覚えはなかったが、ゼミで同じ教授にお世話になっていたから、数回話したことがあったのだ。

しかし……


「……お会いしたこと、ありましたか?」


真山は心底不思議そうな表情を浮かべ、僕の顔をまじまじと見つめてきた。

僕はちょっと傷ついたのだけれど、一応先輩だし、その場は笑顔でやり過ごした。

< 3 / 9 >

この作品をシェア

pagetop