秘蜜の秘め事
女の子らしいかわいいイラストの表紙だった。

「来年の1月にドラマ化されるんです。

そう言えば、古沢さんの小説も同じ時期に」

そこまで言った時、古沢さんが浮かない顔をしていることに気づいた。

「…古沢さん?」

不安になって彼の名前を呼んだわたしに、
「実は、映像化することに反対していたんだ」

古沢さんはそう言って息を吐いた。

「デビュー作の『紅蓮の夢』は梨衣ちゃんも読んだ通り、不倫の話だ。

愛憎劇と言った方が正解かも知れない。

あの話は僕が大学を卒業して、小さな印刷会社の事務員として働いていた時に書いた話だった」

遠い昔を思い出すように、古沢さんは話し始めた。
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