青い猫の花嫁

初夏の風が、ふたりの間をすり抜ける。
トワの空色の髪が持ち上がり、その綺麗な顔をあらわにした。

弓形の眉
スッと通った鼻筋。
綺麗な唇。

吸い込まれそうな程の、蒼穹の瞳。




「その代償は、…………忘れる事」

「……」



わすれる……こと?




「楔が解かれ、俺や三國は呪いから解放される。 
でも……それに関わったすべての者から、記憶が消されるんだ。約束の日にはなかったことになるんだよ。俺と出会ってからの事、すべて。

相手を大事に想う気持ち。
好きだって気持ちを、忘れちゃうんだ。

どちらに転んでもいいように。そうなってるらしい」


「……」



トワの言ってる事が、全然わからなくて。
頭の上から、思い切り水をかけられたような、そんな感覚に立っていられなくなりそうだ。

それって……それって、


「……好きな、気持ちを忘れるって……みんな?みんな忘れちゃうの?」

「…………、そうだよ」


そう言って、微かに笑ったトワ。

それはすべてを受け入れて、諦めている……。
そんな顔だった。



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