青い猫の花嫁
千年続く猫の想い


――――今から千年も前の話。

まだ占いや魔術などが信じられていた時代。




それはそれは美しい女性がいました。
彼女は体が弱く、目が見えません。

流行り病を患い、山の中の小さなお屋敷に隔離されてしまいました。


話し相手もおらず寂しい日々。

しかしある日、一匹の猫が迷い込んできたのです。
猫は娘に懐き、いつもそばにおりました。


猫に連れられて、たくさんの動物達も娘の元へ通うようになりました。

鼠、牛、虎、兎、辰、巳、馬、羊、猿、鳥、戌、亥、そして、猫。

……皆、娘を愛していました。


毎夜毎夜、皆娘の元へ通い、娘が笑ってくれるようにと、楽しい宴を開きました。



そして、ある満月の夜。
娘はとうとう死んでしまいました。

皆が見守る中、天へと昇る娘。


けれども、その中に猫の姿がありません。

最近めっきり床に臥せていた娘に、元気を出してもらおうと、猫は贈り物を探しに行っていたのです。


しかし、それは
間に合いませんでした。





……。

魚名さんの見せるそれは、まるで絵巻物語。

小高い丘の上。

小さな小さな蒼穹の猫が、泣いている……。



「……そんな……」


あと少しだった。
あと少し、早ければ間に合ったのに……。


頬を伝う涙が、ポツリと足元を揺らした。





< 294 / 323 >

この作品をシェア

pagetop