青い猫の花嫁

泣き続ける猫に、近づく小さな影に気付いてハッとした。


あれは……。


「鼠……?」


鼠は猫の前に座ると、ニコリと笑った。


―――あの方は戻ってくる
そう言っていたよ。―――と。




……え?もどって、くる?あの人は、亡くなったのに?



『彼が猫についた、最初で最後の嘘です』

「……」


魚名さんは、哀しそうに眼を伏せて、そしてまた視線を落とした。



猫を少しでも元気づけようと、鼠が付いた優しい嘘。
猫は、それを信じ、いつまでも娘を待ち続けました。



何年も何年も。
雨が降っても、雪が降っても、灼熱の太陽が照りつけようとも。

ずっと、ずーっと。

ほかの動物たちが説得しても、猫は聞き耳を持ちませんでした。


そうしていつの日か猫にも寿命がやってきます。

最期の日は、寒い寒い雪の夜でした。


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