青い猫の花嫁


――哀れな、猫……
そうまでして、娘を待ち続けたのですね……。


動かなくなった猫のそばに、魚名さんが寄り添った。

あたしもトワも、身動き一つとれず、瞬きも忘れてその光景を見つめていた。



見逃したら、ダメだ。
ちゃんと目に焼き付けないと……。

ギュッと握りしめた手のぬくもりだけが、お互いがそこにいることを確認できた。



魚名さんは、懐から呪符のようなものを取り出して。
目を閉じると詠唱を始めた。


すると、その瞬間。
雪は雨になり、その雨があがり、夜空に大きな満月が姿を現した。

ぼんやりと光り輝く蒼穹の猫。


五芒星を指で描き、印を結ぶ。



ああ、これだ。

きっと、ここから始まったんだ……。



十二支と、猫たちの……楔……。




―――猫の願いが叶うその日まで……
お前を娘と同じ人間の姿に変えましょう。

そうだ、娘を愛していた十二支たちも、人に。
お前ひとりじゃ、可哀そうですね。




頭の中に、そう聞こえた声。

猫の亡骸に手を触れて、魚名さんは静かに涙を流した。



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