WITH
「ん……時間が止まればいいのにね?」
薄く笑んで答えると、「はぁー…っ」と頭上から聞こえて、更に強く抱き締められた。
「ごめんな?紗和……。寂しい、よな?」
「寂しいけど……たまーに廉が抱き締めてくれるなら、大丈夫だよ♪」
廉が、酷く弱々しい声でそう言うから、出来るだけ明るい声で答えた。
嘘ではないけれど、本心でもない……
本当は、毎日だって会いたいけれど無理でしょう?
蜜華さんの存在が、私を臆病にさせる。
“私を好きなら、蜜華さんと別れて”なんて言って、また廉が私から離れるくらいなら、このままの関係でも構わないとそう思ってしまうの―――
「また、電話するから……」
その言葉を残して、廉はエレベーターの中に消えていった。