WITH
晴哉に連れてこられた場所は、前に一緒に来た砂浜の海岸で……
「オレと紗和ちゃんの、唯一の思い出の場所だね?」
そう言って笑う晴哉が、真っ直ぐに見れなかった。
いくら暖かくなってきたとはいえ、シーズンオフの海岸には誰もいない。
すっかり暗くなった今は、時折吹く海風が肌寒いくらいだった。
「紗和ちゃん……アイツの話って、なんだったの?」
砂浜へと続く段差に並んで座り、聞かれるままに私は話し出した。
晴哉には、知る権利があると思ったから―――
「なーんだ……全部、紗和ちゃんの為ってこと?本当、敵わないよなー…」
話し終えた時、晴哉はハハッ…と力なく笑いながら呟いていた。
私はただただ俯いて、何も考えたくなくて……
波の音に意識を持っていかれそうになっていた。