先輩と私と。
「42番...宮武梨乃、伴奏石上莉生......」





マニュアル通りのそれを聞きながら、舞台に立つ。






私はいすに座る。






梨乃は正面に向かって堂々と立って、







振り返る。





アイコンタクトで頷きあって、




楽譜をよーく見て、





伴奏を弾きだす。





梨乃はすぐに入ってくれて、





音程も、リズムもいつもの通り。




ちょっと緊張しちゃって、弱奏部が大きくなってしまう。





でもその代わりに強奏部をいつになく大きくしていた。





音階のところで少し早くなってしまっても、





私が纏め上げる。






梨乃の音をしっかり聞いていれば、




梨乃が私の音を聞いていてくれれば、




それは必ず合う。






梨乃が静かに楽器を口から離せば、






まもなく、私の伴奏が綺麗な和音を作って、






静かに手をピアノから離して、





礼をすれば、もう大丈夫。





会場から出た瞬間に梨乃は一瞬固まった。





「はぁぁぁ.......」






そのため息が、失敗なのか、やりきったものなのか、私には分からない。






でもそのあとのぱっとした笑顔で成功なんだと悟る。





「やったね!!!!」





「うん!!!!」





梨乃の口は真っ赤に腫れあがる。





「早く、百合見に行こう!!!」




「うん!!!」






梨乃は楽器を急いでしまって、





顧問に乱雑に預ける。





そのままいそいで、百合の会場に走る。






入ったそのとき、百合が立っていた。




「まにあったよ」





息の混じった、小さな声で言い合って、笑う。





後ろのほうのイスにちょこんと座る。







すぐに百合の音が聞こえてきた。






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