もう一度愛を聴かせて…
わたしのヒステリックな叫び声を聞き、橘さんの向こうからお母さんや看護師さんが顔を出した。


そして、みんな口を揃えて言うのだ。


「子供は無事だから安心して」

「若菜ちゃんの気持ちはよくわかったから……今は無理しないで」

「そうですよ。ママになるんだから、赤ちゃんのことを一番に考えなきゃ」


みんなでわたしを騙している。

今まで、鬼のように責めながら……手のひらを返したように優しい言葉を口にするなんて。

理由は決まっている。もう子供がいないからなんだ。


わたしには誰の言葉も信じられなかった。


「急に……みんなして優しくなって。そんなに嬉しいんだ。橘さんも、赤ちゃんいなくなってホッとしてるんでしょ? 嘘でもいいから泣いてよ!! せめて赤ちゃんのために……泣いてあげてよっ!!」

「若菜、どう言えばいい。なあ若菜、本当なんだよ。誰も嘘なんかついてない。子供は無事なんだ。本当に、もう誰も奪ったりしない。俺がさせない。結婚しよう、俺と結婚してくれ」

「死にたい……死んでしまいたい。でも、許してくれるかな……あの子に追いつけるかな。ママって呼んで欲しかった……それだけなのに」

「若菜、若菜っ! しっかりしろ! 俺の声を聞いてくれよ。頼む、頼むから」


わたしは両手でしっかりと耳を塞いだ。





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