もう一度愛を聴かせて…
頭の中には自分の声だけが響いている。


「四月にね、生まれるはずだったの。ちょうど桜の時期。パパにね、愛してるって初めて言ってもらったんだよって……桜の下で教えてあげたかった。この腕に抱きたかった。……早く行かなきゃ、追いつけなくなる。ママが傍にいてあげる……絶対に、ひとりぼっちにはしないから……」

「若菜っ!!」


ふいに彼の怒鳴り声がした。

顔を上げると橘さんもポロポロ泣いていた。


「若菜、頼むから……戻ってきてくれ。二度とひとりにはしない。愛してる、本当に本気で、心から愛してる」


ああよかったって思った。

悲しんであげるのがわたしひとりじゃ寂しいもの。


「ありがとう……泣いてくれて。あのね、手術の前に病院でモニターに映ってたの。とっても大きくなってて、顔もしっかりしてて、パパに似てたよ。でも……この写真じゃわからないよね。あの映像も写真にしてもらえないかな? もう、残ってないのかな? もっと、もっともっと、たくさん写真撮ってあげたかったよ……」


ポケットにずっと入れたままだった、たった一枚のエコー写真。

わたしの赤ちゃんが、これだけになっちゃった。



「じゃあ、本当に似てるかどうか、見てみましょうか?」


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