【短編】ユキと最後のKiss
「取り敢えず、廊下に出てみよう。きっと、お兄様やお姉様も声を聞いて外に出てきているはずだよ」
「そうだね」
濃霧のようなモヤモヤが心の中に立ち込める中、気付かないふりをして彼女と扉の外へ出た。
「いやだいやだいやだいやだああああああああああああああ!!!」
廊下に出た途端、兄の声の叫び声を聞いて、反射的にそちらを向くと両親の部屋の扉が開いていて中から明かりが漏れていた。
急いでその部屋まで走って行き、中に入りかけて、驚愕した。
母親の好み故に白で統一されていた部屋が、絵具をぶちまけたように赤く染め上げられている。
赤い、紅い、あかい、アカイ。
その色と鉄のような鼻をつく匂いに酔って気持ち悪い。
「ひぃっ……」