RED ROSE


 叔母の声に我に返り、美玲は視線を空から下げた。

「うん」

 まだ心配そうな叔母に、気遣うような眼差しで美玲は頷いた。

 ――あたしも飛ぶって決めたから、大丈夫。

 美玲は、菅原に自分が父親に性的虐待を受けていたと告白したあの日に、ある事を相談していた。

『あたしがこの事を裁判で証言したら……母の罪は、軽くなりますか?』

 それは、情状証人として出廷する事だった。情状証人とは、言葉の通り、情状酌量を目的とした証人である。美玲は少しでも母の罪を軽くする為、世間に全てを公表する事を決めたのだった。

 怖くない。あたしは羽ばたくの。そう、羽ばたく。大きく、大きく、翼を広げて――。
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