等心大〜tou・sin・dai〜
よくばり。
Pipipipipipi…

うっとうしい
携帯のアラーム音。



月曜日。
また一週間が始まる。




重い体を
ベッドから起こすと

鏡に
ボサボサの髪で
血の気のないような顔の
私がうつっていた。



西村彩。
25歳。


音大を出たあと
楽器屋で働いている。

実家住まい。
彼氏あり。






一階に降りて
シャワーを
かるく浴びる。


そして丁寧に
全身に
クリームを塗りたくり


顔も、体も、
マッサージをする。



25歳にもなると
この朝のマッサージが
ケッコー重要。


年には勝てないなぁ。
なんて。



それこそ
10代の頃は
朝はギリギリまで寝て
顔をじゃぶじゃぶ洗って

ファンデと
眉だけ描けば
外に出れたもんだけど。





マッサージのあとは
顔に美容液をのせ

またまた丁寧に
メイクをする。



あぁ、
めんどくさい。


どうして女は
美しくなければ
いけないんだろう。



絶対
キレイな女が
得をする。

モトがキレイでも
手を抜く女はダメ。



『素』で
勝負できるのは
せいぜいハタチ前後まで。



朝の
この支度が
どんなに面倒かなんて
男には
わからないだろう。




髪をブローし
着替えて
リビングに顔出すと



母が
「彩に手紙きてるわよ」


テーブルに封筒をおいた。


誰だろう。
手にとると
同級生の真希からだった。


まだ時間があったので
開けてみる。


『お久しぶり!
 彩、元気にしてる?

 実は…結婚しました。
 お腹にはbabyもいるの。
 式は色々あって
 まだしない予定です。
 近いうち会おうね』
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