等心大〜tou・sin・dai〜
「あらあらいらっしゃい」

母は一瞬驚いて
すぐに笑顔になった。



「仲直りしたのね。よかった」

「僕が悪かったんです」

「いいんですよ。
 彩はわがままでしょう。
 ごめんなさいね」



そうだよ。
友貴はちっとも悪くないの。
私のわがまま。


「さぁさ、どうぞ上がって」

「お邪魔します」


母と友貴の後について
私もリビングへと入った。


ソファーに腰かけると
友貴が改まって母をしっかり見た。


「お母さん、
 今日はお話があります」

母はコーヒーを入れようとした手をとめ、背筋をしゃんとして私達の向かい側へ座った。


「何かしら」

「この前二人で病院に行きました
 七月に子供が産まれます」

「えっ…本当に?」


母は驚いて
私の顔を見ると
次の瞬間には目を潤ませた。



「やだ彩ったら…
 早く言わなきゃダメじゃない」

「ごめん…」

「体冷やさないようにしなきゃね
 式も急いで決めなきゃ」

「近いうちに僕の実家にも
 報告してきます」

「そうね!それが先よね。
 私ついにおばあちゃんなのね」



嬉しそうな母を見ると
複雑な気分になる。


「高原さんも夕飯食べていって。
 お寿司でもとりましょう。
 おめでたいことですもの」

「ありがとうございます」

「彩、ツワリは大丈夫?」

「うん…軽い方みたい」

「早く帰ってくるように
 お父さんに電話しなきゃ」



イソイソと準備をする母は
体中から嬉しい気持ちを発していた。


いいのかな。
これでいいのかな。



自分だけ
異空間にいるような気がして
なんだか落ち着かない。


友貴と母の声が
窓の外から
遠いところから聞こえるような
そんな気がした。
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