すっぴん★

幾ら歩き回っても、犯人に結び付く目の覚めるような閃きは、いっこうに
出て来ない。

「ああ、やめた」

「むしゃくしゃするので、おみやげのチョコレートでも食べようっと」


友達の為に買って来たナッツ入りのチョコレート。

その包装紙を、素がびりびりと破り始めた。
そして、チョコレートを取り出し一切れ摑むと、それを齧り出した。


濃厚な甘さと、ナッツの香ばしさが口の中に広がる。
それを、飲み込もうとして。


「あっ、いけない。いけない」


慌てて素は、ティシュにチョコレートを吐き出した。


「危ない。危ない。もう少しで飲み込む所だったわ」


素は胸を撫で下ろした。


今の素の心境を表かのすように、口の中にチョコレートのほろ苦さが残った。

アレルギーが出て以来、素は大好きなチョコレートを控えていた。
好きなスナック菓子も、珈琲も。
水以外は口にしていない。

食事だって、アレルギーを考えて碌な物は口にしていない。
それなのに、それなのに・・・。







 
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