DECIMATION~選別の贄~

待ち合わせは学校の最寄り駅より三駅先の小さなカフェだった。

菜月からしたら少し遠いのだが、想次郎の通勤沿線にぶつかる駅だったのでそこにした。

駅ビルの一階に構えるそのカフェは明るすぎない間接照明で照らされる、西欧アンティークの家具が映える。

二人が向かい合って座る形の配置がほとんどで、お洒落なテーブルを間にしながらくつろいで時間を過ごせるようになっていた。

「いらっしゃいませ、お一人様ですか?」

菜月が入ると、大学生くらいの女性店員がそう尋ねた。

茶色の綺麗な髪を後ろで結わえ、笑った時に見える八重歯が可愛らしいと菜月は思った。

「いえ、後から1人」

「ニ名様ですね。それではこちらへどうぞ」

案内されたソファに座るとほのかに花の臭いがした。

「良いにおい……」

そう無意識に呟いて、女性店員に気づかれてしまい菜月は思わず顔を赤らめる。

「ローズアブソリュートと言う精油とティートゥリー等の自然な安らぎがある精油を配合したアロマなんですよ」

「へぇーアロマかぁ。お洒落だなぁ」

「ふふ、ありがとうございます」

それから少しアロマについて話をして、店員お薦めのコーヒーをミルクと砂糖たっぷりで注文した。

辺りには男女での客が多い。

静かな雰囲気の中でゆったりと会話を楽しんでいる。

「なんか大人だなぁ。私みたいなチンチクリンが居ても良いのかな?」

確かにこのカフェの中で1人だけで座る制服の女の子というのは少し浮いている様にも見えた。

少しして奥のキッチンから先程の女性店員が注文したコーヒーとシフォンケーキを運んできた。

「うはぁー、美味しそう!

おしゃれー!!」

カフェなんてチェーン店くらいしか入ったことがないものだから菜月の感動は大袈裟にも感じるほどのものであった。

そんな様子を見て店員が笑う。

「お客様、かわいらしいですね。

お洒落なだけじゃなくて味も美味しいですよ。強面の店長が作ったとは思えない程に」

最後の言葉は内緒にして欲しいことを伝える為か笑いながら人差し指を立てて口に当てていた。

「ごゆっくりどうぞ」

「ありがとうございます、いただきまぁす」

菜月はソムリエにでもなったつもりなのか普段はしもしない、コーヒーの薫りをかいだ。

そして何が分かったのかは分からないが、一度自分の中で頷いてブラックのまま一口すする。

「…………」

少しずつ菜月の顔がゆがみ。

「うぇぇ、苦い」




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