満月の人魚
(そんな…どうしたらいいの?)

家長であるこの父の言うことは昔から絶対である。

それに、この場で「私を誘拐したくせに」と言う訳にもいかない。

瑠璃がそのことを知っていると知られれば、何をされるか分かったものではない。 

しかし婚約なんてとてもじゃないが頷けない。

瑠璃の中で様々な恐怖が息巻いて、呼吸が苦しくなってくる。

(丈瑠……丈瑠、助けて)

瑠璃は心の中で丈瑠に助けを求めるのであった。

そんな瑠璃の様子を横で零士がじっと見ていたことに、瑠璃は気付かなかった。
< 71 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop