紗和己さんといっしょ
『イヤだったら言って下さいね』
必ず耳元で低く囁く、その台詞。
とてもとても、ずるいの。
「…だってさあ。イヤじゃなくても恥ずかしかったり驚いたりしたらつい『イヤ』って言っちゃうじゃん」
「うん、言っちゃうね」
「そうするとね、本当に止めちゃうの」
私の嘆きを聞いた佐知が一瞬目を丸くした後、爆笑した。
「あはははっ、何それ!」
「佐知、ノリちゃん起きちゃうよ」
「おっと、いけない」
あわてて佐知は口許を押さえたけれど笑いは止まらず必死で肩を震わせている。
「それって社長、本気で遠慮してるの?それとも意地悪でやってるの?」
「分かんない…でも一度止められちゃったら『もう一回』なんて恥ずかしくて言えないじゃない」
「あはははっ、あんた達可笑しい!あははは」
堪えきれなくなって佐知は再び声をあげて笑った。私は赤くなった顔で少し拗ねながらお腹を抱えてる友人を睨んだ。
「佐知、笑いすぎ」
「ごめんごめん。やーでも可愛いなあ美織、恥ずかしいだなんて」
「だって言えるわけないじゃん、そんなコト」
拗ねた表情を継続中の私に向かって佐知は今度は意味深にニッと笑うと
「社長は言って欲しいんじゃないの?もっと、って。美織の可愛いおねだりが欲しくてやってるんじゃないのかなあ」
テーブルに身を乗り出してとんでも無いことを言い出した。
それを聞いて、ちょうど口を付けたほうじ茶が液体なのに私の喉に詰まる。