砂漠の舟―狂王の花嫁―(番外編)
「まったく……大げさなことを」


宮殿の執務室で様々な仕事をこなしながら、サクルの訴えをカリム・アリーは一蹴した。


「双子のお子様が、それも後継者たる王子と可愛らしい姫君の両方に恵まれながら、贅沢な悩みですよ、陛下」


大きく息を吐きながら言われると、サクルにはなんとも答えづらいものがある。


このカリム・アリーもほぼ同じころに妻を娶った。正確に言うなら、サクルが王命により娶らせたのだ。正妃シーリーン――リーンの異母妹、レイラーを。

レイラーは王女として甘やかされて育ったせいか、ずいぶん性根の歪んだ娘だった。このカリム・アリーも毛嫌いしていたので、てっきりバスィール公国の領土に入るなり、放り出してくるかと思ったが……。

なんと、冗談抜きで妻にしたというから驚きだ。

間違いにより処女を奪ったので妻にした、と釈明したが、客観的に見てそれだけとは言いがたい。

十七歳も年下の新妻を相手に、夜ごと睦んでいるという話だ。



リーンは一気に乙女らしくなったレイラーを見て、手放しで喜ぶが、サクルは複雑だった。

幸せならよかったと言うべきか。あてが外れて残念と言うべきか。


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