砂漠の舟―狂王の花嫁―(番外編)
だが、そんな仲のよいふたりだが、子供はまだ授かっていない。

リーンに聞いたところによると、レイラーが話題にしたがらないそうなので、彼女もあえて尋ねないと言っていた。

子供が授からないことを気にしているとしたら、双子に恵まれながら文句を言うサクルは、さぞや疎ましいことだろう。


とはいえ、素直にカリム・アリーをいたわることなどサクルの柄ではない。


「そういうおまえこそ、いつまでも新婚気分で結構なことだ。赤ん坊の……それも双子のけたたましさを知らぬから、涼しい顔ができるのだ。そろそろ本腰を入れて子作りを始めるがよい」


レイラーが身籠らないというのであれば、他の妻を娶るよう許しを与えるつもりだった。そもそも、レイラーを押しつけたのはサクルである。そんな意味も込めた言葉だったが……。


サクルの言葉にカリム・アリーはニヤリと笑った。


「お心遣い恐れ入ります。しかし、それは杞憂となるでしょう。新しい年には、我が屋敷からもけたたましい声が聞こえる予定ですので」

「カリム……おまえ、では、わざと作らなかったのか?」

「――御意」


当然のような顔でカリム・アリーはうなずく。

たしかに、妹のレイラーが先に子供……それも男子を産もうものなら、リーンは重圧で潰れそうなほど悩んだだろう。


「よくぞ、あのレイラーが承諾したな」


そればかりは心の底から感心して言う。


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