どんなに涙があふれても、この恋を忘れられなくて
ぱっと手を離された時、
渉の表情は少し悲し気だった。
そうか。
俺はずっと渉をガッカリさせながら生きて来たんだな。
何も知らず、無責任なことをいい
大切なやつですら守れない。
「何してんだ、俺……」
ずっと一緒にいた幼馴染の気持ちにすら
気付かない奴が
同時に2人を守るなんて出来るわけねぇだろ。
人はどうして、誰かを守る時
誰かを犠牲にしなくては守れないんだろう。
そのくせどうして、大切な存在は
増えていくんだろう。
その問いかけは、誰にも届くことなく
簡単に消えた。